これからの新築注文住宅や住宅業界を考える
昨日は、弊社建築士の立川と住宅省エネルギー講習会を受講してきました。
2020年に義務化される「省エネ住宅」新基準のお勉強です。
講習会を終えて、自分なりに今後の新築注文住宅業界の流れを考えてみました。
今、私が持っている情報と交えて書こうと思います。
格段に飛躍する「省エネ性能」と上がる「建築コスト」
講習会では主に、省エネ住宅の考え方や具体的な施工技術の基準。
基準クリアを審査する具体的な方法などに終始しました。
実際に考え方や施工方法などについては、普段から自分たちが「標準仕様」としてやっていることでした。
(他社がどうかはわかりませんが;)
この技術が、現在の住宅会社にどれくらい浸透していて、どれくらいの精度で工事が行われているかは定かではありませんが、義務化することでかなり住宅の質は底上げされるのではないでしょうか。
しかし、省エネ性能が高い住宅を建てるためには、それなりのコストが必要となってきます。
高い断熱性能を有した断熱材やサッシ、ガラスなどは、現在では決して安くない建築材料の類に入ります。
であれば、「省エネ住宅」が義務化されれば、間違いなく建築コストも上がるはずです。
(費用対効果ではなく、単純に価格の面での比較です)
義務化に近づくにつれ、販売量が増えていくことで単価が下がる可能性もあります。
技術の進歩で低コスト・高性能の建築材料が出てくる可能性も考えられます。
しかし、現段階で考えると2020年以降の新築は昨今のようなローコストの形態を取れなくなるのではないかと考えます。
どこまで基準は引き上げられるのか
私は、「そろそろ省エネ性能を追求するのにも技術的に限界がきているのではないか」と感じています。
そのことを講習会後に、名刺交換もかねて講師の方と少しお話をさせていただきました。
講師の方も私と同じ意見で、これ以上基準をあげることは現段階ではあまり考えられないのでは、とのこと。
既に、長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH(ゼロエネルギーハウス)など、耐震・省エネを高い基準でクリアした認定制度が動いています。
それ以上の技術が開発されたとしても、一般住宅にはオーバースペックのような感じがするのです。
そんなこんなで見えてきたものは、国の最終目的達成の道筋です。
循環型社会を目指して
国が、住宅業界の省エネ化に補助金を出したり、法整備したりするのは、京都議定書が理由です。
国としてのCO2削減目標を達成するためには、多大なエネルギーを使用する新築と、日常のエネルギー消費の主役である住宅の2つの要素をいっぺんに削減する必要があります。
一つ目は、新築の着工数を減らす(長く住める住宅を新築する)こと。
耐久性を有した住宅は、改修を重ねて何代にも渡って利用され続けるものになります。
とすると、わざわざ新築しなくても住む場所が確保できるということです。
二つ目は、省エネ性能の高い家を建てさせる(住むエネルギー消費を抑える)。
断熱性能を高め、冷暖房設備の使用を抑えることができれば、住むエネルギー消費をおさえることができます。
また、高効率の設備機器を導入させることによっても、エネルギー消費をおさえます。
この2つを達成することにより、目標達成に大きな好影響をもたらすことができます。
新築で建てた住宅が、長きに渡り利用されていくことによって、エネルギー消費を格段に落とすことができるようになるのです。
新築のあとは中古住宅へ手をいれる?
新築に対してはある程度路線が固まっています。
では次は「既存にある住宅」、いわゆる中古住宅ではないでしょうか。
現在、中古住宅は空き家が多く、その大多数が、現在の新築住宅のように省エネ性能や耐震性能が高いわけではありません。
しかし、中古住宅をスクラップ&ビルドで質の良いものに建て替えていけば、エネルギーがかかりすぎる。
だったら、リフォームの中で質の良いものにしていこうということです。
既に国では「中古住宅の長期優良住宅化リフォーム推進事業」が動き出しています。
中古住宅を長期優良住宅化する行為に対し補助金を出し、市場を作り出していこうという動きです。
同時に建築エネルギー消費を抑えようという考えでしょう。
既に、省エネ住宅義務化によって、ある程度の技術は備わっていることが推測されます。
それを今度は、中古住宅に向けて発揮してもらおうという流れです。
まとめます。
省エネ義務化に伴い、建築コストは上がる可能性が高い。
昨今のようなローコストの形態が取れなくなると仮定すると、新築の市場を一気に縮小する。
一戸建ての住まいを求める人々は、中古住宅に目を向け、それと同時に国が「中古住宅の長期有良化」に補助金を出しながら、市場を作り出し、促進させる。
それによって、建っている全ての住宅がとても良質なものになり、改修を重ねながら何代にも渡って住み続けられていく。
こんな流れになるのではないでしょうか。
であれば、不動産売買の市場と住宅建築の市場は縮小の一途を辿る。
大手は手を引き、需要の主な供給役は、地元の中小工務店や設計事務所に委ねられる。
こんな中、自分たちは何を目指し、何をもって社会に貢献できるのか。
そんなことを考えるキッカケになった講習会でした。
終わり
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